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「旅×英語」で+αの経験を〜旅における"英語力"の大切さとは?〜
更新日:2021年2月10日
2011年3月11日、東北沖を震源とする観測史上最大の大地震が発生しました。
震災による死者・行方不明者は1万8428人、被害額は16兆円から25兆円と、歴史上類を見ない未曾有の大災害が東北を、そして日本全体を襲いました。そんな瀕死状態の日本を少なからず支えてくれたのが「海外からの義援金や救助隊」です。
国連加盟国だけでも191もの国々が日本のために支援を手を差し伸べてくれ、各国著名人からの「ガンバレ、ニッポン」や「Pray for Japan」の温かいメッセージは震災からの復興の大きな励ましとなりました。
そんな海外の国々からの支援を、今度は『ありがとう』と伝えるために世界一周の旅に出た、当時大学3年生の菅原弓佳さん(以下弓佳さん)という方がいます。
今回のインタビュー記事では、そんな弓佳さんの世界一周や、旅における英語の大切さに迫ります。
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『ありがとう』を伝える旅

TAKEーーまず始めに、弓佳さんは震災時の海外からの支援に対しての『ありがとう』を伝えるために世界一周をされたとのことですが、そのルートや期間などの概要を伺っても良いですか?
弓佳さんーーはい。実際の期間は約8ヶ月で、合計で11ヶ国を回りました。
『ありがとう』を伝えるために、具体的には海外の大学で同世代の大学生に対してプレゼンテーションをして、震災経験から学んだことや日本を支援してくれたことに対する感謝の気持ちを伝え、結果的には13の大学でプレゼンテーションを行うことができました。
TAKEーー海外での大学ということで、プレゼンは全て英語ですか?また交渉などはどうやって行ったのですか?
弓佳さんーー大学によっては日本語学科の生徒に日本語で行ったり、英語が担当な現地の日本人生徒に助けてもらったりしたのですが、基本的には全て英語で行いました。
交渉に関しては、よその国から来たなんのコネもない大学生がいきなりプレゼンさせてくれと飛び込みでお願いしていったので、簡単ではありませんでしたね(笑)

TAKEーーそれでも大人数の前でのプレゼンとなると凄いですよね。ただでさえ日本語でも緊張するのに...!もともと世界一周前に留学経験等はあったんですか?
弓佳さんーーはい。大学2年時の後期に大学の留学プログラムでアメリカ・シアトルへ3ヶ月間の留学を経験しました。 現地でのインプットでは、大学の授業での英語学習はもちろんのこと、空いた時間に映画を日本語吹き替え・英語字幕にして会話表現のスペルを書き取るスタイルで勉強しました。この方法によって日常での英語表現や言い回しが身についたのと、ニュアンスの習得には多いに役立ちました。
そしてアウトプットにおいては「できるだけネイティブの友達と話す機会を作る」ことです。そうすることで前述のインプットを通して身につけた表現や言い回しの実践経験を積んだり、よりネイティブの「生きた英語」を身につけることを心がけました。
また、相手の異なる文化や言葉をリスペクトし相手のことを知りたいと思う好奇心や、日本の文化などを紹介したりして日本人としての私を相手に知ってもらうことが、結果として活発なコミュニケーションや留学先でのストレス軽減につながり、結果として英語力の上達に起因したと思います。
世界一周の旅に向けた英語学習⇢現地でのプレゼン

TAKEーー留学後〜世界一周出発前はいかがですか?一定期間英語を使わないとなると、英語のブランクによる低下はありますよね?
弓佳さんーーそうですね。だからこそ帰国後もアウトプット(スピーキング&リスニング)の機会は確保しようと、留学先で出会った海外の友達とオンラインで頻繁に話すようにし、スカイプやFacebook・メッセンジャーはよく使っていました。

全体的には、自分が伝えたいことが正確に伝えられるように、旅する国の文化や国際情勢を学ぶことは意識しました。こちらの無知によって相手を不快な気持ちにさせないように、現地で仲良くなった人に事前にそれらの話を入念に聞きました。
TAKEーー世界一周中に行った、震災支援のを伝える各国大学でのプレゼンテーションはいかがでしょうか?1対1での会話とはまた違った難しさがあると思いますが。
弓佳さんーーそうですね。初めて英語でプレゼンを行ったのがシンガポール(公用語は英語)だったのですが、実際始めると途中で焦って内容が飛んでしまい、3分の1ほど進んだところで日本語に切り替えてしまいました。幸い事前に英語のスクリプトを配っておいたので話している内容は大体は理解できていたと思いますが、それでも後悔が残る講演でした。
シアトルでの3ヶ月間の留学を経て、元々ある程度の英会話はできたのですが、交渉のための英語、プレゼンのための英語となると別物になり、英語力の面で課題が残りました。
それからは現地の人にプレゼンテーションをチェックしてもらうようにしたり、滞在先で勉強したりと"準備"を入念に行いました。

TAKEーーなるほど、実際に震災についてのプレゼンを行い各国大学生との意見交換や交流を行った中で何か気づきや発見はありましたか?
弓佳さんーー1つ強く記憶に残っているのが、インドの大学で原子力発電所についての質疑応答を行ったことです。「福島第一原発事故を経て、日本の技術を使ってインドに原発を作るとしたら、どう思いますか?」という質問を学生達に投げかけところ、
「当たり前に良いに決まっている!」
「最高だよ、それは」
と意外な回答が帰ってきたんです。続けて、「先進国の旅行者たちはインドの貧しさや何もないといった部分を面白おかしい体験として語りたがるんだろ?」とすごい剣幕で食ってかかられました。
その時に、国や政府の考えではなく、現地に暮らすローカルの人々の目線に立って問題に対する考え方や姿勢を持つことの大切さを思い知らされ、それらは日本で暮らしているだけでは決して感じることができない経験でした。
海外を旅する上での「英語力があるメリット」

TAKEーー海外で旅する上で「英語力があるメリット」はどんなものがありますか?
弓佳さんーー3つに絞るとすれば、下記になります。
(1)1つのトピックスに対して、違う価値観に触れる機会が多くなったこと
(2)時事問題に対して、実際に現地の人からの視点で情報を聞けるようになったこと
(3)他の国で起きてることが、自分ごとになったこと
(1)に関しては、例えば人種差別への反対、社会正義の実現を訴えるBlack lives matterの問題に対してアメリカと日本の立場で観る視点、黒人・白人・黄色人種などの立場から観る視点でも考えは違います。その中で色んな立場の人からの話を聞きやすくなりました。
だからこそ、様々な立場から見た、物事に対する価値観を持った人々に寄り添った考えを持てるようになったことが大きいです。
(2)は、マレーシア・インドネシア・ブルネイの三カ国の領土が含まれるボルネオ島での旅が大きく関わっています。元々ボルネオ島はイスラム教徒の戒律が厳しいと言われていて、同性愛者であることが分かったら死刑になる。と渡航前に聞かされていました。
しかし、実際に現地ボルネオ島の人々に真意を聞いてみると、「そんなわけがない」と一蹴されました。「お前は友達が同性愛者だったら殺すのか?」と言われ、確かにそれはありえないと私も思いました。
人々もすごく穏やかで、建築物もエキゾチックで美しかったボルネオ島が、外の人々の勝手なイメージや根拠のない噂で"禁断の島"みたいな扱いをされていたのはもったいないなと強く感じ、こういった事は、中東のイランに行く時も同じでした。


最後に(3)に関して、最近ヨルダン・ベイルートで起きた爆発事故でも、もし現地にヨルダン人の友達がいたら...と思うと心配せずにはいられなくなります。他のソーシャルイシューでも同じです。そういった面で世界で何が起きたのか、起きているのかをいち早く情報を仕入れ、人々と意見交換する行為は、英語力がなければ出来ないことの1つです。
TAKEーーなるほどです。僕もこの3つはあてはまりますね。特に(3)は実際にオーストラリアに留学・ワーホリ経験がある中で、森林火災もそうですし、コロナウィルス感染症の影響も自分にとって他人ごとでは無くいつも大好きなオーストラリアを気にかけるようになりました。
最後に、弓佳さんにとっての英語力は自身のキャリアにおいてどういった影響を与えましたか?
弓佳さんーー正直、キャリアという観点では特に影響は与えていないです。ただ「人生」には大きな影響がありました。前述の3つの点でもそうですし、自分と違う文化を持つ外の人と話すことできるのも「英語力」のおかげです。
Editor's note〜編集後記〜
東日本大震災における海外からの支援をキッカケに感謝の気持ちを伝えたい。と世界一周の旅に出た菅原弓佳さん。
現地海外の大学でのプレゼンや、旅中のコミュニケーションは「英語力」無しでは出来なかったことでしょう。
また、英語に自信がなくても旅はできる。という前提は踏まえた上で、英語力があれば旅がもっと充実するのは確信を持って言えることです。そしてその旅の経験は、自身のキャリアや人生を大きく帰る可能性を秘めています。
そういった点で「旅×英語」の位置づけは、人とモノのグローバル化が進む現代において、今後ますます重要になってくるのではないでしょうか?
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(取材/記事執筆 ONE WAY TAKE)